2005年09月23日

ネルソンという犬

私達は、手術と安楽死という選択をした。けれど、反対のことも考えてしまう。もしかしたら、その方が良かったのではないかと。

母はお寺さんに、犬の供養はどうすればいいかを聞いた。この事は去年お寺さんに確認した。忘れる事ですと言われたらしいが、いつも寝る前にはネルソンの事を考えて、お前の事は忘れてないよと、話しかけていると言っていた。安楽死を選んだことで、私達には彼を殺したという気持ちが残った。

赤い犬の話はこれで終わりです。いつも読んでくださった方ありがとうございました。ネルソンという犬がいた事を覚えていてください。
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2005年09月22日

ネルソンという犬

えさが食べられなかった。臭いを嗅ぐが鼻が臭わないので、口を付けない。水しか飲まない。毎日毎日痩せていくのが判った。粗相をするようになった。水も飲めなくなった。獣医がこれ以上生かしても苦しむだけですと言った。安楽死を選んだ。

私は逃げたのかもしれない。仕事で行かれないと言って、母と妹に連れていってもらった。今はもう放されて寝そべっている彼を抱きしめて、涙声でさよならと言った。不思議そうな顔をしていた。

前の晩にお別れをした。この日を絶対に忘れないでおこうと思ったのに、なにか歌ってあげたのだが、何を歌ったのか思い出せない。ただ、目の上がへこむ程痩せた彼が、お座りをして、首を傾げてこちらを見ていた姿しか覚えていない。

泣きながら妹が言った。彼女に抱かれて、2回痙攣して目を見開いて死んだと。どうしてもお目目を閉じてくれなかったと、号泣した。13歳と数カ月。2月だった。
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2005年09月21日

ネルソンという犬

手術をした。
私が仕事から帰った時、まだ麻酔から醒めずに寝ていた。夜中になって、醒めかけて立ち上がろうとした。すぐに倒れた。手を貸そうとしたが、拒んでいるようにえ見えた。だから、がんばれと声を掛けるしかなかった。何度も立ちかけ、倒れた。そうやって、夜が過ぎていった。

彼は良くならなかった。鼻の部分まで進行していたので、鼻から膿みが流れるようになった。ふわーっふわーっと彼は口で呼吸することを覚えた。それでも散歩に出かけた。いつものように駆け出したが、駈け続けられなかった。立ち止まって私を見上げた。理解できないと言う目をしていた。いつもブラシをかけていた公園の水道で、流れる水を手に受けて水を飲ませた。手に彼の舌が当たる感触を覚えている。
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2005年09月20日

ネルソンという犬

彼との関係は変わらず、12年が過ぎた。
少し太り、少し耳が聞こえにくくなり、シロとは相変わらず喧嘩している。そんなある日、異変が始まった。細い糸のような虫を吐いた。2、3日後散歩中に植え込みに倒れた。それから魚の太い骨が口に刺さった。妹が何とか取った。その日から数日して、あくびがしにくくなった。そして彼は犬小屋から出て来なくなった。食事もしない。何度も名前を呼んで出て来た彼は、いつもの彼ではなかった。顔がむくみ、毛に艶がなく元気がない。早速、獣医に連れて行った。
上顎に癌が出来ていた。

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2005年09月19日

ネルソンのあだ名

ヒットラー:彼の鼻の下にヒットラー風の白いちょびひげが生えていた。
チャネルのワン(シャネルの香水もじり):耳以外はええ犬やなあと言われる位に美しい。
横串おワン・横串紋次郎:JRの高架を超えた所に恵比寿神社がある。1月のえべっさんの時、落ちていた串にさした肉を喰わえて、どうしても放さなかった時に付けた。その頃テレビで木枯らし紋次郎が流行っていた。
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2005年09月18日

ネルソンという犬

うちの家族の育て方が彼を家のボスにした。今なら解る。彼も違う地位に居たら、いい仲間になれただろう。

姉が倒れて、亡くなるまでの数日、家には一人だけが寝に帰った。私が帰った時、大人になってから放したことがない彼を放して寝た。夜中に手のひらに暖かさを感じて目を開けると、彼が私の伸ばした手に頭をのせて寝ていた。かわいくて、愛しくて見つめていた。その時だけだった。次の朝にはまた恐ろしい犬になっていた。放して寝たのもその時だけだった。
彼が大人になるまでの1年間と、その日の思い出で、私は彼を愛した。今も愛している。
彼の写真は震災で全部なくなった。
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2005年09月16日

ネルソンという犬

恐ろしい犬になっても、心置きなく触れる時があった。
台所の洗濯機の横に、裏口に面して犬小屋があった。その犬小屋に手を入れて、毎朝おはようと言って頭を撫でる時と、商店街の北の端にある神社の横の公園で、ブラシをかける時だ。どちらも子犬の時からの習慣で、それには文句を言わなかった。
それと、なぜか子供が好きで、小学校の側で見かけるとしっぽを振り、声でもかけられると、身体の形が無くなりそうな程、身体を振っていた。勿論、撫でられても文句も言わなかった。

どうも私達は彼の下と見られていたみたいだ。
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2005年09月12日

ネルソンという犬

それから彼は、あらゆる犬に脅しをかけるようになった。また、不思議なことに、あらゆる犬が喧嘩を売りに来た。家の中からでも彼が通ると飛び出してきた。散歩の時に気を抜くことができなくなった。彼は常に緊張し、戦い続けているように見えた。そしてどんどんイライラしていき、私達にも気に入らないことがあると唸るようになった。ある日ついに妹が噛まれた。驚いた彼女が後ろに下がった。それを追って彼は唸り続けた。その日から、彼は噛み犬になった。気に入らない時に少しでも体に触れると噛みついた。その時噛まれた私の指関節は今も曲がっている。
始めは口で叱り、それから手で叩き、終いには乗馬用の笞で叩いたけれど駄目だった。彼の死期が近づくまで直らなかった。
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2005年09月11日

シロ

始めのうちは、ネルソンは気にもしていないようだった。そのうちにいつも付いてくる事にイライラしてきた。脅すようになった。文化住宅の路地の入り口に鉄の門があった。そこでいつもは帰って行くシロが、ある日、家の戸口まで付いて来た。ネルソンがすごい声で唸りだした。それに反応してシロも唸り返した。あっという間に大喧嘩になった。うちのがキャンと言う。耳を噛まれた。キャンと言えば負けだと聞いていたのに、気が狂ったみたいに反撃を始めた。うちの犬は引き綱を付けていたので何とか引きはがして家に連れ込んだ。改めて見るとシロの前足から血が大量に流れていた。シロを連れて謝りにいった。放していたこちらの方が悪かったのでといって、反対にメロンを貰ってしまった。その日から、ネルソンが死ぬまで、そしてシロが死ぬまで敵になった。その時の傷でネルソンの片耳は垂れたままになった。
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2005年09月10日

シロ

文化住宅の並びの角に、アルミサッシを扱うガラス屋があった。そこに毛が長く、しっぽが垂れ、目の上に黒いマジックで眉を描かれた、うちの犬より少し体格が大きい白い犬がいた。名前はシロ。元野良で、そこの次男が拾って来た。汚れるのでしょっちゅう表の水道でからだを洗ってもらっていた。うちの犬が散歩に行く時について来た。彼は妙なゲームをする。広い国道を渡る時、車を見ていてその直前を渡るのだ。まるでスリルを楽しんでいるみたいに。2、3回繰り返して、それから私達について来た。喧嘩などしないおとなしい犬だった。
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2005年09月09日

ネルソンという犬

ある日、雌犬が呼びに来た。そして彼は出かけてしまった。そのままその日は帰って来なかった。探しても見つからなかった。待つしかなかった。次の日、玄関の戸を開けると、2頭が居た。彼は全身で笑っていた。

その日からだんだんと私達と遊ばなくなった。
1歳を過ぎるとまるで遊ばなくなった。
会下山に行っても、今度は私達がにおいを求めて歩き回る彼の後を付いて行く事になった。

彼は大人になってしまった。
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2005年09月08日

ネルソンという犬

五郎のグループは消滅した。出かける時は、わたしか妹と一緒の散歩になった。わたしたちは、彼の行きたいように、したいようにした。それが彼の犬格を認めることだと思っていた。

細長い町の後ろに、今はサクラの名所になっている会下山と言う所がある。その頃はまだ粘土質の土がむき出しの禿げ山だった。子供の頃、土の坂をお尻で滑り降りた時そのままだった。背の高い草がところどころにぽそぽそと生え、少なさ故に緑が目に残った。そんな所で彼とはよく遊んだ。まだわたしたちの後を楽しそうに付いて来てくれた。
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2005年09月05日

ネルソンという犬

彼は黒っぽい毛が茶色くなり、見事な輝く赤毛になった。立ち耳巻きしっぽの人と目を合わせても目をそらさない中型の日本犬になった。そして近所の犬と仲間をつくった。
その頃は今ほど規制が厳しくなく、ほとんどの犬が放されていた。よく似た月齢のまだ大人になっていない犬たちが群れていた。商店街のかどの小鳥屋の五郎がボスで、うちのがNo2と見受けられた。いつも五郎のあとをついて歩いていた。色んな事を学んでいるように見えた。
五郎との仲は、五郎が大人になり、彼女を作るまで続いた。五郎の犬小屋は表にあり、そこで彼女と居る所を覗きに行って、脅されてお終いになった。
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2005年09月02日

ネルソンという犬

キャンと言わない仔が一番強いらしい。確かに強かった。後で思えば。
新しい子犬は面白かった。猫しか飼ったことがなかったので。雰囲気が違う。コロコロして陽気だ。彼の目に映った初めてのテレビ画面に、座り込んで甲高い声で吠えついた。文化住宅の玄関で寝ていた彼の上に、郵便受けから入れられた新聞がどさりと落ちて下敷きになり、恐ろしさで身動きもできず、う〜う〜と唸り続けていた。おかしくもあり、かわいくもありだった。
彼は、その頃テレビで見ていた、大きなふさふさの犬と同じ名前のネルソンと名付けられた。全然似ていなかったけれど。
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2005年09月01日

愛しのワンコたち

私は神戸市兵庫区大開通という、右に新開地の繁華街と左に番町という怖い所がある人情味あふれる下町に住んでいた。そこの商店街にある小さなお菓子工場で最初の犬をもらった。35年以上も前の事。母がそこにパートに行っていた。
初めて見た時、たわしを持って帰ったかと思った。小さくて黒っぽい塊。次の日にタンスと鏡台の間に入り込んで探し出すのに時間がかかった。
しっぽを持ってぶら下げてもキャンといわない子をもらったと言う。
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