ドンは、徐々に足腰が弱っていった。
散歩の途中でよろけて、地面の続きと見える、枯れ葉が上に積もったどぶに落ちてしまった。
すぐにはい出してきて、何ともなかったかのように見えたけれど、腰を痛めたのではないかと思う。
その日以来、家では普通に行動しているが、散歩に出掛けると、しっぽがあがらない事が起きはじめた。
箒のように突っ立っていた彼のしっぽは、徐々に下がっていって、身体からまっすぐに後ろに伸びた状態になった。
今まで喜んで先導していた彼が、チラチラとこちらを見て、とぼとぼと歩くようになった。
あの地震の日以来、私にとって特別なワンコになった彼はだんだんと壊れていった。
垂水の冬は、兵庫に比べて寒い。
朝、霜が降りているのが普通だ。
2月のとても寒い日、いつものように仕事から帰ったわたしは、ドンと散歩に出掛けた。
出掛ける前彼は、お腹を見せて、足を大きく開いて、妹の横で寝ていた。
うれしそうに外に出て、車道を渡った所の草むらに、足をあげておしっこをした。
そのままの姿勢で方向転換をした。
軽い悲鳴を上げた。
しっぽが完全にお尻の下まで下がってしまった。
わたしが道を上がるとついてきたけれど、帰りたそうにした。
あまり歩きたがらないので、連れ帰った。
その夜、彼は一晩中悲鳴を上げ続けた。
あまりにも痛がるので、バッファリンを飲ませた。
それで痛みは収まったようだった。
次の日、雪が積もっていた。
わたしと妹は、交代でドンを抱いて獣医院へ行った。
匂い袋の腫瘍から出血もあって、わたしのブレーカーは血に染まった。
獣医院で下に降ろすと、彼は右後肢を挙げたままだった。
こんな寒い日に連れて来なくても、往診してあげたのにと言われた。
レントゲンを撮ってもらったけれど、骨に異常はなかった。
痛み止めをもらって、収まるまで静かにさせておくように言われた。
少しほっとして、連れ帰ったけれど、途中の彼の好きな階段を、どうしても彼は登ると言って、登って行った。
途中で登れなくなった。私達が抱いて登った。目がくらみそうなほどまっすぐに上に伸びた階段だった。
1週間ほど彼は毎晩悲鳴を上げた。
寝返りを打ったり、方向転換をするとひどく痛んだようだ。
周りが引っ越しをしていって、あまり人が居なくてよかったね、と私達家族は話した。
2度と彼の、お腹を見せて寝転ぶ姿は、見る事が出来なくなった。
2007年06月03日
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大丈夫なのかな?
その犬は、生きてますか?
生きてたら
嬉しいです。
気にかけてくださって、ありがとうございます。
ドンはこの後、小康状態になりましたが、今は、もう居ません。
亡くなって、9年になります。
がんが進行して亡くなりました。