
愛しいドン
ドンは、もうあんまり外に出なくなった。
下の道が見えるガラス戸の前に寝ている事が多くなった。
そこから外を眺め続け、遠くの道を犬が散歩していると、首を伸ばして見つめていた。
彼は何を考えていた? いや、想像したくない。
仮設は、どんどんと人が引っ越していって、何となく寂れた感じになっていった。
そうすると、どこかから、バイクの若者が集まってきて、夜遅くまで座り込んで大声で話していた。
静かな、穏やかな垂水の、休暇のような生活は終わったみたいだ。
私達も、6月に、灘に引っ越す事になった。